結局SEOのKPIって何を見ればいいのか?9割の企業が間違えている理由を解説

「結局、KPIって何を見ればいいんですか?」
SEOコンサルティングをしていると、この質問を月に何度も受けます。
順位を追えばいいのか、流入数なのか、CV数なのか。
議論をすればするほど、答えが見えなくなっていきます。
実際の現場でよく聞く声としては
- 「順位は上がったけど、テールワードばかりで…」
- 「セッション数は増えたけど、売上につながっているか分からない」
- 「CVポイントが多すぎて、どれをKPIにすればいいか迷う」
こんな声、聞き覚えありませんか?
実は、SEOに取り組んでいる企業の9割は、KPIの設定に見直しの余地があります。
なぜか。
多くの企業が「説明用の数字」と「判断用の数字」を混同しているからです。
ざっくり把握するなら流入数と順位でも良いでしょう。しかし、それ以上深く見るなら、きちんとした分析設計が必要です。
パワーポイントにデータを転記して、会議で読み上げるだけ。そんな時代は終わりました。
この記事では、なぜKPI議論が迷走するのかを整理し、フェーズごとの指標選定の考え方を提示します。
なぜKPI議論は迷走するのか
SEOで追える指標は驚くほど多いです。

検索順位
オーガニック流入数
CV数
記事公開数
重要URL送客数
Thanksページ
CVR…。
これらは非常に重要な指標ですが、言葉だけ先行すると大きな解釈ズレや認識齟齬を起こします。
例えば、順位で考えてみましょう。
SEOに取り組む以上、狙ったキーワードの順位は気になるものです。
ただし
- キーワードの数はたくさんあり、定義によって重要度が変わる
- 実際は1記事で10個20個のワードで流入を獲得する
つまり、モニタリングしているキーワードで上位表示していたとしても、検索ボリュームや、クエリの質によって、その成果は大きく変わります。
では、流入数はどうでしょうか?
こちらも確かにわかりやすい指標なのですが、
- 関係のないトラフィックが含まれていることも
- コンバージョン直結のキーワードの流入数は決して多くない
- コアアルゴリズムアップデートや仕様変更で大きく変わる
- 仮に流入増えたとしても、「これが売上にどう繋がっているの?」の因果関係が複雑で説明しきれない
こんな問題があります。
では、CV数はどうでしょうか?
キーイベントが何件。と報告をしている企業も多くあると思うのですが、私の経験上、GA4をきちんと設定できている会社はかなり少ないです。
- キーイベントを設定してはあるが、余計なイベントが混じって使えない
- ベンダーに任せていたため、数値の解釈が異なっている
- ITPトラッキングやリファラーが取得できない問題にぶちあたる
正直、事業目標に必要な数字を適切に実装できている会社は全体の10%もいかないんじゃないかな…と感じてます。
だからこそ、やはり最低限の投資対効果を考えるために、データ設定まわりの取り組みは不可欠だなと感じます。
ただ、数値を適切に依頼できる会社はとても少ない。
とはいえ、GA4やSEOの領域は、「手順通り取り組む」と「目的から作業設計すること」でとんでもないレベル差が生まれます。
コンバージョンイベント、BigQuery、GTM、閾値、サンプリング、クロスドメイントラッキング、Key Event設定と、この領域は掘れば掘るほど奥が深く、数珠繋ぎで広がっていきます。
さらに、今出ている数値も、解釈を誤ると意思決定や進め方は全く遠回りのものになってしまいます。上司にすでに報告しているからこそ、数値を今更変えられない。とか普通にあります。
データを正しく取ろうとして、取れていなかったり、正確性を検証しないまま数値を放置していると、意思決定の質は間違いなく下がります。
もちろん、完璧な設計に越したことはありませんが、「完璧ではなくても、ビジネスに役立つ指標はある程度整理出来ている」状態までを作るのが、ほとんどの企業にとっては一番重要なのだと思います。
KPI設計の基本は二層構造で考える
では、どう整理すればいいのか。まずは、説明用と判断用を明確に分けることが重要です。

説明用KPI(社内コミュニケーション用)
- 検索流入数の推移
- ブランド検索の増加率
- 主要キーワードの順位分布
- 記事公開ペース
これらは「SEOが前に進んでいる」ことを社内に示すための指標です。分かりやすく、説明しやすいものを選びます。
あえて言葉を乱暴に言うと、この辺りの数値は、本質的な変化や意思決定の手段とするのが難しい指標ばかりです。「どんな取り組みが行われているか」「その進捗はどうなのか?」を確認する意味では重要ですが、この数値を見たところで大きな気づきは生まれにくいですし、あくまで説明用のものと割り切る勇気が必要です。
成果を生むために必要なのは判断用の指標。です。
判断用指標(施策の意思決定用)
例えば一例ですが
- GTMでカスタムイベントを設定し、LP別や対象ページ別のデータを集計する
- 記事単位の流入・新規ユーザー数・CV数を可視化し、トラッキングする
- 記事別の日次~月次の数値とそのキーワードやチャネルを分析し、インパクトを調べる
- 新規とリライトそれぞれのパフォーマンスを記事単位で見て、見逃しが無いか確認する
- 目標を達成するためにどのような手法があるか整理し、その起案数を見る
こちらは「次に何をすべきか」を決めるための指標。現場で使える粒度の細かい数値を設定します。
この2つを分けて管理することで、「報告」と「改善」の両立が可能になると考えます。
SEOと解析の構造的な問題:スキルがそれぞれで分断されがち
Webは細分化すると、制作や、広告、解析、SEO、SNS、動画といった形でスキルセットが分断されます。
その上で、このKPIについては領域が分断されがちなことが原因だと考えています。
SEOコンサルは記事戦略は語れてもGTMは触らない。解析会社はGTMは設定できても、どの記事がBtoBリードに貢献しているかという戦略視点がない。結果、多くの企業が「thanksページでCV計測して終わり」という設定に留まっているような印象です。
本当に必要なのは、重要リードと間接リードを分けて、記事単位の貢献度を可視化するような設計です。
でも、これを適切に提案・実装するためには、その会社のビジネス理解、チームコミュニケーション、技術の深さ、幅の広さなど、かなり高いスキルレベルが求められます。
だからこそ、この辺りをうまく統合し、実装できている企業は少ないのだと考えます。
フェーズ別KPI設定ガイド:理想と現実の落とし所
本来は、企業ごとに分けるべきではあるのですが、やや強引にフェーズ別にまとめてみました。完璧には難しいかもしれませんが、大きく分けるとこんな形に分かれます。

立ち上げ期:基礎を固める
まず「現状把握」が最優先です。基本的な計測設定を行い、基準値を作ります。
見るべき指標:
- 狙いたいキーワードの順位状況(Rank Trackerなどでモニタリング)
- インデックス状況
- 最低限の成果イベント(送客数など)
【実務のヒント】 「計測設定→現状把握→改善点整理→施策立案」と綺麗に進まなくても大丈夫。完璧を求めすぎず、進めることが重要です。
拡大期:成果の芽を見つける
施策が広がり始めたら、「どこに成果の芽があるか」を探し、資源を集中させます。
見るべき指標:
- 非ブランド流入の増加
- セッション数の伸び率
- ページ群ごとの送客数
- 新規vsリピーターの比率
【実務のヒント】 この段階から「SEO単体」ではなく「サイト全体のインパクト」で評価することが重要です。
改善期:積み上げる
この段階は「70点を75点にする」戦いです。タイトル改善で1%CTRが上がれば、それは大きな成果です。
見るべき指標:

- コンテンツ更新頻度
- 個別記事のCTR改善率
- リライト後の順位変動
- 内部リンクのクリック率
成熟期:質で勝負する
流入数の伸びが鈍化したら、「質」の勝負に切り替えます。100人来て1人CVより、10人来て2人CVの方が価値があります。
見るべき指標:
- CVRと売上貢献度
- 内部リンク経由のCV
- ブランド検索の比率
【実務のヒント】 ITPやCookie規制でトラッキング精度は落ちます。「絶対値」より「傾向」を重視し、完璧な計測を求めすぎないことです。
結局、自分たちのビジネス要件や、社内の文脈で取り組まないと、目標を見失う
ここまで読んで「じゃあ結局うちは何を見ればいいの?」と思うかもしれません。フェーズ分けも実際には曖昧で、きれいに当てはめられないことも多いでしょう。
だからこそ、私はSEOの本質をこう考えています。
SEOとは、競合よりも信用を積み上げる施策である。
- Googleからの信用(E-E-A-T、被リンク、更新頻度)
- ユーザーからの信用(再訪率、ブランド検索、直接流入)
KPIはこの「信用」を数値化し、社内に翻訳するための装置にすぎません。100点満点の正解はなく、常に「今より少し良くする」ことの繰り返しです。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが、SEOはまさにそういう性質の施策です。できることを積み重ね、結果を待つ。その過程を可視化するのがKPIの役割です。

実務での落とし込み方
理想論は分かった。でも実際どうすればいいのかを簡単に解説します。
- まず、GA4とGTMの設定を見直してください。その上で、上層部や代理店が作った設定と、現場で必要な計測がズレていることがよくあります。「とりあえず計測」ではなく「判断に使える計測」を意識することが大切です。
- 次に、計測の限界を受け入れること。完璧なトラッキングは不可能です。7~8割の精度で十分と考え、残り2割は定性的な判断で補います。
- 最後に、継続可能な体系を作ること。複雑すぎるKPI設計は続きません。シンプルで、更新が楽で、誰でも理解できる。そんな体系を目指してください。重要な数字を決めたら、施策に集中した方がコスパが良いです。

まとめ
KPI議論を終わらせるための3つのポイントを最後におさらいします。
- 説明用と判断用を分ける – 社内報告と施策判断は別物
- フェーズに応じて見直す – 成長段階で指標は変わる
- 信用の積み上げと捉える – 完璧な数値より継続的な改善
KPIは万能の答えではありません。
しかし、自社の状況に合った指標体系を作れば、議論に振り回されることなく前に進めます。
もし今、KPI設計で悩んでいるなら、一度立ち止まって「誰のための数字か」「どのフェーズにいるのか」を整理してみてください。それだけでも、かなり見通しが良くなるはずです。
今自社がやりたいことをベースに実務に落とすには、技術的な知識の深さはもちろん、幅も重要です。
シンクムーブ社ではそのような「発注するのが難しいけど、どう進めたらいいんだろう…」という企業ごとのニーズに対し、その会社に今必要な最善の解決策を提示するのが得意です。インハウスマーケティング共創支援というサービスをやっているので、是非お気軽にご相談ください。



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