【イベントレポート】AI検索時代の「生存戦略」──インハウスマーケターが今、本気で向き合うべき未来

本ウェビナーは「生成AIの台頭により、検索体験が根本から変容している今、インハウスマーケターはどう生き残り・成長の道を切り開くべきか?」というテーマを元に、SEO分野およびAI活用の第一線で活躍する専門家による講演・ディスカッションが行われました。本記事では、そのセミナーの内容を詳細にまとめています。
6月5日(木)までアーカイブ動画を公開していますので、合わせてそちらもご覧ください。

登壇者

株式会社Tech Fabric/SEO研究チャンネル 平 大志朗 氏
2012年ごろからSEO業界に携わり、検索エンジンマーケティングを中心としたデジタルマーケティングの分野で活躍。
2014年に CINCを共同創業し、データを活用したマーケティング戦略の支援を行う。
2020年から 「SEO研究チャンネル」 を立ち上げ、SEOに関する知見を発信。
現在は株式会社TechFabricにて、生成系AIのコンサルティング業務に従事。
参考記事:AI検索時代のマーケティングは総力戦? SEOのプロが語る今後3年間で必要な戦略と対策(MarkeZine)

シンクムーブ株式会社 代表取締役 豊藏 翔太
シンクムーブ株式会社代表取締役。SEOとAIの知見を活かしたファシリテーションが強み。アイオイクス株式会社Webコンサルティング事業部フェローを兼任している。著書に『AI時代のSEO戦略──組織を動かし成果を引き寄せる実務マネジメント』がある。
参考記事:生成AIが台頭する今、SEO担当者に求められる新スキル~戦略立案からLLMOまで徹底解説(SEMPlus)
司会:株式会社Tech Fabric/SEO研究チャンネル 今泉 航太 氏
Tech Fabric平氏パート:生成AIと検索体験の変化
- Google検索のUI激変!「AIモード」がもたらす検索行動の根本変化とは?
- DuckDuckGoやBraveが越えられなかった壁と、ChatGPTが持つ“本質的な違い”。
- 「Googleの牙城は崩れるのか?」プロが「わからない」と答える本当の理由。
- AI時代でも、いやAI時代だからこそ輝く「E-E-A-T」の本質。
- 企業が今すぐ経営レベルで取り組むべき「コアコンピタンスの再定義」と、その具体的ヒント。
- RedditはAI翻訳でどうやってトラフィックを爆増させたのか?その戦略の裏側。
加速する検索体験の変化:「10個のリンク」から「AIとの対話」へ
AI技術の進化により、検索体験にも具体的な変化が現れています。平氏は以下の例を挙げました:
Google検索結果のUI変化
最近のGoogleは、『AI Overview』や『AI Mode』などが注目されています。米国版Googleでは、検索結果画面に『AI Modeで検索しましょう』と表示され、ユーザーを積極的にAIチャット型検索へと誘導しています。
これまでの『10個のリンクが並ぶ』従来型の検索結果画面から、『AIとの対話』を前提とした全く新しい検索体験へとシフトしつつあります。

競合サービスの動きとGoogleの対応
過去にもDuckDuckGoやBraveといった『プライバシー重視』を謳った検索エンジンがGoogleに挑んできましたが、ユーザー行動を大きく変えることはありませんでした。
しかし、ChatGPTやPerplexityといったAIチャット型の検索は、従来の検索とは根本的に異なるユーザー体験を提供しています。
明らかに一定数のユーザーがこの新しい検索方法を『便利』だと感じているため、ChatGPTが出た当時はGoogleも強い危機感を持ち、幹部陣が『コードレッド』を発令するほど対応を急いだほどです。
この状況下で重要となるのは、「AI検索の普及により検索行動自体が変化する可能性を理解し、その変化に合わせた対応策を講じられるか」という点です。
SEOはもはや従来型の検索順位を争う施策だけではなく、「新しい検索体験を踏まえた企業戦略の一環」として捉え直す必要性が高まっています。
Google帝国は盤石か?:市場構造とビジネスモデルへの激震
AI技術の進化により、検索市場やそのビジネスモデルにも激震が走っています。平氏は以下の例を挙げました:
AI検索が市場構造に与えるインパクト
最近ではBloombergやReutersなどの経済ニュースや機関投資家向けメディアでも『AI検索』が頻繁に取り上げられるようになりました。

これはつまり、機関投資家たちが『検索市場に大きな変革が起きる可能性がある』と見て、すでに株価にも影響を及ぼし始めている証拠です。
もはやSEO業界内だけの話ではなく、ビジネスモデル自体が変わる可能性が高まりつつあります。
Googleは検索市場を失うか?
最も気になるのは、『GoogleはAI検索の普及によって検索シェアを失うのか?』という点です。

正直に言って、これはまだ誰にも分かりません。
私自身もSEO業界に身を置く立場として、Googleが今後も検索エンジンとしての地位を維持することを願っていますが、ユーザーが選び続けるかは分かりません。
また、ChatGPTがこれほど注目を集めている事を正確に予測できた人はほとんどいないでしょう。
イノベーションのスピードは極めて速く、確実に未来を予測することは非常に困難です。
経済・技術戦争と予測困難性
さらに現在は米中間の経済戦争や技術競争も熾烈です。特に生成AIの普及で重要性が増している半導体市場(GPU分野)では、NVIDIAが現在圧倒的なシェアを占めていますが、Huaweiなど他企業がさらに高性能なチップを開発している可能性も否定できません。
このような状況の中で、1〜2年後の正確な市場変化を予測することは極めて困難であり、『確実に当てられる』戦略は存在しないと考えています。
この状況下で重要となるのは、「SEO業界に留まらず、検索という市場全体の変化をより広い視野で捉え、不確実性の高い環境下でも柔軟に対応できる戦略を立てる」という点です。
もはやSEOは単純な技術的施策ではなく、ビジネスモデル全体を俯瞰した上で対応策を講じる必要があります。
不変の真理と新たなる潮流:「人間」と「AIエージェント」
AI技術の進化に伴い、人間の購買行動にも新たな変化が生じています。平氏は以下の例を挙げました:
不変の真理としての「E-E-A-T」
AIが急速に進化し、検索体験や購買プロセスが変わる中でも、『絶対に変わらないもの』があります。

それは『ユーザーが人間である』という事実です。人間の生物学的な構造や心理的な行動原理は、何千年経ってもほとんど変わっていません。
つまり、人間は昔から村社会を形成し、『他者への信用や信頼』を軸にして行動します。
SEOの分野で重要視されているE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)とは、まさにこうした人間の行動原理を見事に定義した概念です。ユーザーは、『誰が言ったか』『どのブランドが発信した情報か』によって購買行動を変化させるのです。」
AIエージェントが商品を推薦する未来

一方で、新しく登場する『AIエージェント』が人間の購買行動そのものを根底から変える可能性も出てきています。
これまではユーザーが比較サイトを見たり、複数の情報源から情報を集めたりしていましたが、今後は高度に発達したAIエージェントが『あなたの好みを理解しているので、こちらを買いますか?』と提案し、ユーザーはワンクリックするだけ、という世界になるかもしれません。
つまり、情報収集や商品比較といった意思決定の前段階をAIが代理し、最終的な『買う・買わない』という判断のみを人間が担うような時代が訪れる可能性があります。」
例えばAmazonのAlexaは2025年2月頃から生成AIを搭載すると言われており、これまでの『微妙な』音声アシスタントから、人間同士の会話に近い自然な対話が可能になると予想されています。
AppleやGoogleを含む各プラットフォーマーもそれぞれ独自のAIモデルを展開し、購買意思決定のプロセスを根本的に変えてしまう可能性があります。
この状況下で重要となるのは、「人間の不変的な行動原理(E-E-A-T)をベースとしつつ、AIエージェントによる購買意思決定の変化を理解し、それに適応したマーケティング戦略を構築すること」です。
SEOを含めたマーケティング活動は今後、AIエージェント時代の新たな潮流を前提に、ブランドの信頼性や専門性を高める努力をさらに強化する必要があります。
イノベーションのジレンマと経営の本質:コダックと富士フイルムの分水嶺
AI技術の進化により、検索市場においてもイノベーションの波が押し寄せています。平氏は以下の例を挙げました:
イノベーションのジレンマと市場変革のタイミング

イノベーションのジレンマの典型的な例として、よく『フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行』が挙げられます。
1980年代のショルダーフォンから2000年代にスマートフォンが普及するまで、多くの企業がこの大きな変化に直面し、成功と失敗を繰り返しました。

検索市場においても同じような『破壊的イノベーション』が起こらないとは言い切れません。
そして、その変革がいつ、どのように訪れるのかを正確に予測するのは非常に難しいのです。
だからこそ企業にとって重要なのは、『変化が起きたときに臨機応変に対応できる組織体制や経営判断力があるかどうか』です。特に大企業や伝統的な組織は、既存の事業成果が求められるため、新しい領域へのR&D投資やイノベーションへの迅速な対応が遅れる傾向にあります。
このため、『AI Mode』など新しい検索体験が普及すると、比較サイトやランキングサイトなど既存のビジネスモデルが大きな影響を受ける可能性があります。そのような状況に備え、いかに経営陣が先手を打って柔軟に対応できるかが、企業の将来を左右します。」
コダックと富士フイルムの分かれ道

歴史的に有名なケースとして、『コダックと富士フイルム』があります。両社ともフイルム事業で大きく成長しましたが、デジタル時代への移行という破壊的イノベーションに直面した際、その対応が大きく分かれました。
コダックはデジタル化への対応が遅れ、大打撃を受けました。一方で富士フイルムは、『自社の本質的な強みはフイルムそのものではなく、薄膜生成技術である』と自社のコアコンピタンスを再定義し、化粧品や半導体材料など新規分野への事業展開を成功させました。

同じように検索市場やSEO業界でも、『我々の強みはSEOで上位表示すること』という表面的な認識から脱却し、『自社が本質的に持っている強みや価値は何なのか』というより深いコアコンピタンスを見直すべきです。
そのうえで、『AI時代にその強みをどう活かすことができるのか』を真剣に考える必要があります。まさに今が、自社の事業を再構築し、大きな転換を図るべきタイミングだと考えています。
この状況下で重要となるのは、「AIがもたらす破壊的イノベーションを理解し、自社の真の強みを再定義し、新しい市場環境に適応するための経営戦略を打ち出すこと」です。SEOも含めたビジネス戦略全体が、新しいイノベーションの波を乗りこなす柔軟性を持つ必要があります。
- もしGoogle検索アルゴリズムが明日、全く別物になったら、あなたの会社は何で顧客に価値を提供できますか?
- AIでは代替できない、人間ならではの「暗黙知」や「創造性」、そして「顧客との絆」はどこにありますか?
- その「本質的な強み」を、新しいAIプラットフォーム上でどう表現し、どう届けていくべきでしょうか?
AI活用の具体例:RedditはAI翻訳で世界市場を席巻する
AIを活用した具体的なSEO成功事例として、最近私が注目しているのが海外の人気掲示板『Reddit』です。Redditは2020年ごろからSEO面での成長を続けていますが、特に直近では日本をはじめとする海外からのアクセスが急増しています。その背景には、『AIによる機械翻訳』の積極的な活用があります。
Redditのページをよく観察すると、日本語を含め多言語に翻訳されたページが急速に増えています。
脚注:このセクションは期間限定アーカイブでのみの共有とさせていただきます。
シンクムーブ豊藏パート:AI検索時代にインハウスマーケターがとるべき生存戦略
- なぜ多くの企業が「AIツール導入したけど、結局使えてない…」という沼にハマるのか?
- AI検索時代でもSEOが「終わったコンテンツ」にならない、むしろ重要性を増す根源的な理由。
- AI技術の“光速の進化”と、組織・人間の“変化の壁”とのギャップをどう乗り越えるか?
- インハウスマーケターこそが持つ、AI時代最強の武器「ファシリテーション能力」とは?
- AIを「効率化ツール」から「価値創造エンジン」へと昇華させるための具体的な思考法。
なぜ「AIツール導入したけど、結局使えてない…」という沼にハマるのか?
最初に問いかけとして、『あなたの会社ではどのAIをどう使っていますか?』という質問をしました。
ChatGPTをはじめ、多くのAIツールが市場に出ていますが、実際に導入していても『本当に使いこなせているのか?』という戸惑いや不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
シンクムーブにおける具体的なAI活用例

私自身の例でいうと、シンクムーブでは記事執筆にChatGPTを利用はもちろんさまざまな取り組みをしています。Obsidianなどのツールと連携し、コンテンツを効率的に量産する実験的な試みも行っています。
結果、当社では外注費がほぼゼロで、AIツールへの大量課金と実験的な運用を中心に、トップページのコンテンツや動画、レポート記事などをAIと人間の共同制作で運営しています。
ただし、マーケティング領域においてはいたずらに記事を増やしてもブランドの質が落ちるため「審美眼」と「責任感」がより一層求められる時代と感じています。
AI活用における課題と組織レベルでの難しさ
多くの企業が抱える課題として、『AIを単体で導入するだけではなかなか実現できないことが多い』という点があります。
実際には複数のAIツールをうまく組み合わせることで、生産性が何十倍にも向上し、コスト削減にもつながります。しかし、この『ツールを適切に活用する』という取り組みを組織レベルで実現するのは容易ではなく、現場では多くの試行錯誤が必要です。ここが多くの企業にとっての壁となっているように感じています。
この状況下で重要となるのは、「AIを導入するだけでなく、複数ツールの組み合わせを試行錯誤し、自社に最適化された運用プロセスを構築していくこと」です。
AI活用はもはや個人レベルの工夫だけではなく、組織全体で戦略的に取り組むべき課題となっています。
AI検索時代の変化:過度な悲観も楽観も禁物
AI技術の進化により、検索市場やSEO施策にも具体的な影響が現れ始めています。豊藏は以下の例を挙げました:
AI検索導入による検索行動の変化

AIOverviewの利用に関するアンケート調査:キーマケlabによると、Googleの検索結果にAIの概要が表示された場合、ユーザーの約80%が『AIの要約だけで満足してしまう』と回答しています。また、そのうちの約43%は『AI回答の元になったリンクをクリックしない』という結果も出ています。
つまり、
AIの要約だけで検索を終えるユーザー層が確実に存在しており、『この影響で検索流入が減少するのではないか』と、多くのマーケターが焦りを感じている
のが現状です。
AI時代への過度な悲観・楽観に対する警鐘

AIが検索行動を変えることへの不安や焦りは、具体的には次のようなものがあります:
- 周囲がどんどん生成AIを導入する中、『自分たちも導入しないと取り残されるのでは』という不安
- AIによって『仕事そのものが奪われるのでは』という焦り
- AIの普及によって『SEO自体がオワコンになるのでは』という懸念
しかし、私はこういった状況を『極端に悲観的に捉えすぎる必要はない』とも考えています。
確かに、『AI検索が普及することで、検索トラフィックが激減する』というシナリオは現実的に起こり得ます。ただ、だからと言って『既存のSEO施策は全て取り組まない』というのも大きなリスクです。
重要なのは既存施策と新規施策のバランス

むしろ今こそ、『既存のSEO施策を継続しつつ、同時に新しいAI関連の試みを並行して実験する』というR&D的な取り組みが必要な時期だと思います。
Search Engine LandのSEO priorities for 2025: Your guide to search successでも『SEO はもはや一時的な解決策ではないことを覚えておいてください。ユーザーのニーズを常に中心に置きながら、永続的で、どんな新しいテクノロジーが登場しても適応できるものを構築することです。』と述べています。
この状況下で重要となるのは、「AI時代の変化を冷静に捉え、悲観にも楽観にも偏りすぎず、現実的な視点で施策を柔軟に組み合わせて対応していくこと」です。SEO戦略は今後、既存施策を継続しながらも、新しいAI関連の施策を小規模に試行錯誤するアプローチが求められています。
SEO担当者に求められる変化:専門性と組み合わせスキル
AI技術の進化に伴い、SEO担当者に求められる役割やスキルも変化しつつあります。豊藏は以下の例を挙げてその方向性を説明しました:
SEO担当者の役割変化と求められるスキル
SEOの最終的な目的は、結局のところ『リード・売上の獲得』か『ブランディングの向上』の二つに集約されると考えています。
そのために重要なのは、社内にある情報資産を効果的に再編集し、それを広報やPR部門など他部署と連携して外部に発信していくことです。
もはやSEOは従来のようなキーワードハックや単純な順位向上だけではなく、『PRや広報といかに連携して企業の価値を高めるか』という文脈で考える必要があります。
AI時代に求められる「専門性 × 組み合わせスキル」

特にAI時代において求められるのは、『専門性の深さ』と『他のスキルとの組み合わせ能力』の掛け合わせです。
つまり、自分が持つ専門的な知識や経験を活かし、それをAI技術や他部署との協業と組み合わせることで、新たな付加価値を生み出すことが求められます。
具体的には、『自分の専門性を活かして適切な問いを立てる → その問いをAIに解かせる → AIの結果を評価・加工し、さらに深い問いを立てる』という一連のサイクルを回す力が重要になります。
この状況下で重要となるのは、「SEO担当者が単なる技術的な施策の実行者に留まらず、深い専門性と他領域との組み合わせスキルを発揮し、AIを活用しながら新たな価値創造に貢献すること」です。
AI時代には、こうした柔軟かつ創造的な発想が求められるでしょう。
組織と人とAIの進化スピードの非対称性
AI技術の進化に伴い、組織や人間がAIにどう対応していくかが重要な課題となっています。豊藏は以下の例を挙げてそのポイントを説明しました
AI・社会・人間の進化スピードの違い

私はここ最近『組織と人とAIの進化スピードの差を見誤ってはいけない』と強調しています。AIの進化速度は非常に速く、来週には新しいツールが登場して、すぐに一般的に使われるような状況が起こり得ます。
一方で、社会全体の変化はAIほど速く進むわけではありません。業務プロセスや雇用の仕組み、倫理的な観点など様々な面で、AI導入に対する抵抗や課題が生じるからです。
さらに言えば、人間の生物学的構造や基本的な思考パターンは簡単に変わるものではありません。そのため、『AIが登場したからといって、組織や人間がすぐに全面的に切り替わる』というのは現実的には難しいのです。
現実的な対応策としての冷静な視点
重要なのは、この『AI・社会・人間という三者の進化スピードの非対称性』を冷静に理解し、『企業としてAIをどう活かしていくか』を慎重に考えることです。性急にAIを組織全体に導入しようとしても抵抗に遭ったり、現場が混乱したりする可能性があります。むしろ段階的にAIを取り入れ、組織や個人が適応するための余裕やプロセスを丁寧に設計することが必要です。
- 「いま、自分がこの会社で提供している価値は何だろう?」
- 「その価値は、AIを使ってどう強化・補完できるだろう?」
この状況下で重要となるのは、「AI技術の急速な進化を把握しつつも、それに対する社会的・人的な適応スピードの違いを理解し、現実的かつ段階的なAI導入戦略を立てること」です。AI活用においては、テクノロジーの進化速度だけでなく、組織や人間の心理的・社会的な要素も考慮した柔軟な対応の出来る人間こそが、より多くの価値を発揮できると考えています。
クロストーク:AI時代、インハウスマーケターの「リアルな一手」とは?
クロストークでは以下のようなテーマで議論をしました。(アーカイブ6/5(木)まで公開予定)
- テーマ1:AI Overviewがでる時代に“SEO成果” はどう図っていくべきですか?
- テーマ2:AI Overviewがでる時代に「SEO施策の主役」は何になると思いますか?
- テーマ3:AIによるコンテンツ大量生産は“アリ”なのか?
- テーマ4:「AI時代に上手くいっているインハウスマーケティング組織とは?どんな変化が起きている?」
- テーマ5:「インハウスマーケ組織の説明責任~経営陣をどう動かすか~
Q&Aセッション:現場の“生の声”にプロが徹底回答!
最後にQ&Aを実施し、当セミナーは好評の後終了いたしました。
Q1. AIチャット内に自社サイトの回答を採用してもらうためには、今のところ従来のSEO施策の延長線で合っていますか? それとも全く違う施策が必要でしょうか?

「3月に私が行ったデータ調査では、AI Overviewに出てくるリンクは、オーガニック検索1位〜20位のサイトが採用される割合が多く、約60%という結果でした。つまり上位表示していれば要約される確率は高い。
ただし『要約される文節の作り方』も重要。単に順位が上位なだけでなく、AIに抽出してもらいやすい書き方を意識しないと採用されにくいケースもありますね。」



「テクニカルな要素に加え、『どうまとめてほしいか』の文構造も影響しますが、今はまだテスト段階で仕様も変わりやすい。あくまで『順位が上がればAI要約される可能性がある』という程度で考えるのが良いかもしれません。」
Q2. AIによる要約(AIオーバービューなど)を経由するとトラフィックが減りがちと言われますが、経営層にそれをどう説明し、関心を持ってもらうべきでしょうか?



「これは難しいですよね。経営者がAIに元々関心があるなら話は早い。でもそうでない場合、こちらから経営者の目線・言葉で『なぜAIが重要なのか』を噛み砕いて伝える必要があります。
『先行投資しておかないと、何年後かに大きく遅れをとる可能性がある』という切り口は説得材料になりますが、最終的には相手次第なので、うまくコミュニケーションするしかないと思います。」



「私も『飲みに行く』推奨派です(笑)。結局、人間同士の信頼関係が大事なので、そこを築きつつ『こういう事例がありますよ』とか『コダックと富士フイルムの話』のようなわかりやすい例を使って、トップを動かすというのが、現実的なアプローチかなと思います。」
Q3. LLM対策について。現状、効果保証が難しく“やって終わり”な施策になりがちですが、どうお考えですか? 私としては結局、従来の権威性・専門性・一次情報の追求でいいのではと思いますが、いかがでしょう。



「私も、今時点で実践できることはそれが一番だと思っています。AI Overviewに一気に最適化できる決定打はまだない。だからこそE-E-A-Tをしっかりやる。既存のSEOが重要、というのは遠回りではあるかもしれないが、今はそれがベターじゃないでしょうか。」



「そうですね。R&D的に小さく実験してみる、というのはアリだと思いますけど、『これをやれば絶対AIが取り上げる』というものはない。なので、既存の堅実な施策をメインにしつつ、実験枠を別途設けるぐらいがちょうどいいかと。」
Q4. 生成AIを用いた画像生成について、以前より精度は上がったものの、まだ独特のAIっぽさがある。コンテンツ内で使うと企業ブランディング上どうなのか。ユーザーに『AI臭い』と思われるのではないか?



「これは確かにありますね。『すごい!』と言われてましたが、一周回って『AIっぽさ』が目立つ場面も出てきました。ブランドとして『安っぽい』と思われる可能性もある。ただ、使い方次第では企業のイメージを最先端に見せる効果もあると思うので、そこはデザインやコンセプトとの整合性を考えつつ使うべきかなと思います。」



「そうですね。誰でもAI画像が作れるようになった今、ただ作っただけだと差別化にならない。人間がそれをどう加工し、ブランド文脈をどう演出するかが重要ですよね。」
Q5. Knowクエリの流入がAI Overview実装後に激減してCVにも影響していますが、一方でCTRとCVRは上がっています。今後、SEOでCV獲得を狙うにはDoクエリを狙うべきか、それでもKnowクエリも継続すべきか、どちらがいいでしょうか?



「正直ケースバイケースで、『こうすべき』とは言えません。サイトの特性や顧客層により、Knowクエリが実は重要だったりもするし、逆にノークエリがAIで代替されてしまうならDoクエリに集中するのがいい場合もある。自社のデータを深く分析して判断するしかないと思います。」



「おっしゃる通りですね。抽象的には『AIが得意な情報はわざわざ人間が書かなくていい』という方向性はあると思います。Know Simple(一目ですぐにわかる情報)なものはAIに吸われる可能性が高いから、そこ以外の強みを出す。最終的にはPVが減ってもCVが増えればいいので、そういう分析が必要かなと。」
Q6. AI Overviewに引用されてもクリックが減ったというレポートを散見しますが、弊社でも同様です。引用されている割に流入は増えず、むしろ減少気味。クライアントでも同様の話はありますか?



「ありますね。ただ、実はGoogleは『AI Overviewは好評でCTR上がってる』と発表しています。でも海外のSEOカンファレンスなどでヒアリングすると、真逆の声もある。つまりサイトによって大きく違う。私自身は『流入が減った事例』はけっこう見ていますが、逆に『増えた』という報告はあまり見ていないのが正直なところです。」



「同意です。AI側の内部クリックデータがまったく見えないのが難点。ChatGPT内でどれくらい検索されて、どれくらい引用先リンクがクリックされているか分からない。今は感覚でしか語れないので、どうしてもふわっとした回答になりますね。」
Q7. LLMOコンサルティングを提供し始めるSEO/マーケ系コンサルが増えています。皆さんはどう見ていますか? 発注する側としては興味があるが、懐疑的な声もあるようです。



「私の考えでは『いい面と悪い面』がある。ある程度大手のコンサルであれば、むやみにできない領域ははっきり示すと思うんですが、本当に現場で成果が出せるのかはまだ未知数。ただ『客観的に社内を説得するための材料をまとめる』『意思決定を円滑にする』など、コンサルに頼む価値も確かにあるんですよね。」



「コンサル業の本質は『正解をすべて教える』だけじゃないです。クライアント組織内で予算承認を得たり、合意形成をするための外部知見を提供するのも大事な役割です。
LLMという新しいテーマでも、どこまで『最適解』を提示できるかは正直まだ不明ですが、『社内に説得材料が欲しい』『一緒に検証してほしい』といったニーズはある。その意味で、LLMOコンサルを求める企業は多いと思います。」
終わりに
以上が、5月20日に開催された「AI検索時代の生存戦略-インハウスマーケターのための未来視点アップデート-」のイベントレポートとなります。
TechFabric平氏の運営するYouTubeチャンネルでは、最新のAIやSEO情報を発信しています。「SEO研究チャンネル」の登録を是非お願いいたします。
もし、事例やクロストークなども見たい!と考える方は、2025年6月5日までの期間限定でアーカイブ動画を公開しておりますので、以下の応募フォームより申し込みください。
アーカイブ動画【25年6月5日(木)まで】
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