【イベントレポート】生成AI時代のSEO講座 〜成果と効率を両立するコンテンツマーケティング最新戦略2025〜

本ウェビナーは「生成AI時代のSEO講座 〜成果と効率を両立するコンテンツマーケティング最新戦略2025〜」というテーマを元に、コンテンツマーケティングにおける効率化と成果創出の両立を目指す最新手法について、業界の第一線で活躍する専門家による解説が行われました。
登壇者
- 司会:株式会社GIG 長谷川 凌大 氏
- 登壇者:株式会社GIG マーケティング事業部部長 内田 一良氏(通称:じきるう氏)
- 登壇者:シンクムーブ株式会社 代表取締役 豊藏 翔太
ウェビナーは主に2つの講演と、パネルディスカッション・質疑応答のセッションで構成されました。

ウェビナーのゴールと要点

- SEOは生成AIの台頭により転換期を迎えており、2025年以降は「ハック」よりも戦略的な役割と信頼性構築が重要になる
- AI ModeやAI Overviewの導入によりオーガニッククリック数に大きな影響(18%~64%減少の可能性)が予測される
- 生成AIはSEO担当者の作業効率化に寄与するが、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)を満たすには人間の判断が不可欠
- 生成AIはハルシネーション(誤情報)のリスクがあるため、必ずファクトチェックを人間が行う必要がある
- AI時代のSEO投資は従来の年間予算計画ではなく、「標準ツール+バッファー予算」の組み合わせが有効
- コンテンツの差別化には自社情報や独自情報の追加が重要であり、編集者の役割と価値が一層高まっている
2025年以降のSEOとAI時代のSEO担当者の役割

シンクムーブ株式会社代表取締役の豊藏による講演では、AIの出現によるSEOプロジェクトの転換期についての解説がありました。
SEOプロジェクトの過渡期
豊藏はまず、SEOプロジェクトがAIの登場により大きな転換点を迎えていることを指摘しました。
「基本的にAIが出てきて、SEOプロジェクトが本当に過渡期に来ていると思っています。従来のSEOは検索アルゴリズムの分析や広告、マーケティングの一部分としての施策が中心でした。ただ、AIが出てきて変化を感じています。」
従来のSEOは検索エンジンのアルゴリズム変化の分析やコンテンツ制作が主な論点でしたが、AIの登場によってSEOの位置づけ自体が変わりつつあります。
AI登場による具体的な変化
AI技術の進化により、SEO施策にも具体的な変化が現れています。豊藏は以下の例を挙げました:
- テクニカルSEOの効果変化
「テクニカルSEOの施策を実施しても、前だったらマークアップの方法に優位性があることもありましたが、今はGoogleが勝手に認識してくれるケースも多いです。」 - コンテンツ制作の変化
「ライティングも良くも悪くも生成AIと人間組み合わされ、品質のバラツキも相まって作られるようになり、『いいコンテンツとは何か』『これってAIが全部作ってるんじゃないの?』というコモディティ化が起きています。」
この状況下で重要となるのは、「人間がアウトプットの質を判断できるか」と「自分の責任を持てるか」という点です。SEOはもはや単なる技術的施策ではなく、ブランド全体の戦略の一部として捉えられるようになっています。
2025年以降のSEOニュース
豊藏は「Future of SEO: 5 Key SEO Trends (2025 & 2026)」を元に2025年以降のSEOに関連する重要なデータと予測を紹介しました:

- AI Overviewの導入:キーワード検索結果の上部にAIによる概要が表示される機能
- AI Modeの予測:検索結果全体がAIによって生成・キュレーションされる可能性
- クリック数への影響:影響を受けるクエリのオーガニッククリック数が18%~64%減少する予測
- 現状の普及率:SERPの約15%にAI概要が掲載されている
- Googleシェアの変化:2024年10月に初めてGoogleの市場シェアが90%を下回った
- UGCの増加予測:2030年までにUGC(ユーザー生成コンテンツ)がSEOコンテンツの80%を占める予測
- AIの効果:83%のユーザーがAIの使用開始後SEOのパフォーマンスが向上したと報告
重要な点として、何年も変わらず維持されている要素は「E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)」と「ブランドシグナルの強さ」であることを強調しました。
数字よりも信頼性の重視
今後のSEOでは、数値目標よりも信頼性が重要になると豊藏は主張します。

「数字のプライオリティがすごく下がると思っています。以前は1年前、2年前、3年後の数値計画が重視されましたが、今は事業や目的に必要なことをきちんとやる『人としての信頼感』がより重要です。数字をハックする目的のみのSEOはユーザーからもAIからもどんどん受け入れづらくなると考えています。」
豊藏は「AIというブラックボックスや、責任の所在があいまいになりがちな現代だからこそ、いい人であり、好かれる人であり、誠実である人がすごく大事」と述べ、技術的なハックよりも人間としての信頼性こそが長期的な成功の鍵であると強調しました。
AIの課題とSEO担当者の新たな役割
AIの進化に伴う課題として、豊藏は以下の点を指摘しました:
- 大量のコンテンツ生成の容易化
- 人の目を通さないコンテンツの増加
- Googleによる情報フィルタリングの重要性の高まり
このような状況下で、SEO担当者は「情報のキュレーター」としての役割を担うべきだと提案します。

「SEO担当者は情報のキュレーターになるべきです。企業内で埋もれている情報や人にフォーカスを当て、コンテンツを編集し、信頼できるブランドを構築する戦略を立てることが大切です。」
さらに、AI時代のSEO担当者には専門性の深さに加え、「デザイン部門、システム部門、経営者との連携」といった、より広い視野での活動がレベルアップと付加価値創出につながるとの見解を示しました。
生成AIを活用した高品質なコンテンツ制作

株式会社GIG マーケティング事業部部長の内田氏(じきるう氏)による講演では、生成AIを活用した高品質コンテンツ制作の具体的な方法が解説されました。
生成AIの目的と課題
内田氏はまず、生成AIの活用において注意すべき点を指摘しました。
「生成AIの目的として作業時間短縮とコスト削減がよく挙げられますが、これだけを目的にすると品質低下やSERPランク低下のリスクがあります。Googleの検索品質評価ガイドラインでは、経験、専門性、権威性、信頼性が重視されています。」
生成AIだけではこれらの要素を満たすことが難しい理由として、以下を挙げました:
- 生成AIは実際の経験を持たない
- 専門性も限定的であり、最新情報が不足している場合がある
- 権威性は人間やブランドに帰属するもので、AIには帰属しない
- 信頼性においては、ハルシネーション(誤情報の生成)のリスクがある
「生成AIだけではこれらを満たせません。AIは経験できませんし、専門性も限定的です。権威性も検索評価もなく、信頼性も怪しいケースがあります。ハルシネーションも発生するため、AIだけでは成果の出ないむなしいコンテンツが大量に爆誕します。」
生成AIの真の強み
一方で、内田氏は生成AIが持つ本当の強みについても明確に説明しました。
「生成AIの真の強みは大量の情報処理やアイデア発想のサポートです。市場調査、競合調査、キーワード調査、検索意図の理解を迅速に行えます。人間が見落としがちな関連性や新しい切り口を提示してくれるので、人間が精査した上で活用すれば、スピーディかつ高品質で自社らしいコンテンツが作れます。」
内田氏は生成AIを「情報整理やアイデア創出のパートナー」として位置づけ、独自情報の提供は人間、情報整理はAIという役割分担が効果的だと提案しました。
SEOコンテンツ作成の具体的プロセス
内田氏は、生成AIを活用したSEOコンテンツ作成の6段階プロセスを詳細に解説しました:

- SEO設計
- 専門ツール(Ahrefsなど)を使用した構造設計
- 主に人間が担当し、AIはあまり活用しない
- 競合リサーチ
- 競合記事の分析やポイント抽出にAIを活用
- 人間の目視によるSERPチェックも並行して実施
- 構成案作成
- AIが作成した叩き台を人間が手直し
- AIは迅速に構成案を生成できるが、質の調整は人間が必要
- 深掘りリサーチ
- Deep Researchなどのツールを活用
- 効率的にウェブ検索を行い、独自情報を付加
- 執筆
- AIが下書きを作成(完成度は6~7割程度)
- 人間が調整、図表の追加、独自の写真や図解の追加
- 編集・構成
- AIと連携しながら人間が行う
- ファクトチェックは必ず人間が行う(最も時間のかかる工程)
内田氏は特にファクトチェックの重要性を強調しました。
「これはかなり時間がかかりますが、AIによる誤情報(ハルシネーション)を防ぐため、人間が必ず行います。これが間違っていると、お客さん・読者にとっていい情報がありませんし、自分たちもブランド毀損することになるので、必ずチェックをしています。」
AIツール活用のデモンストレーション
講演中、内田氏はChatGPTを用いたデモンストレーションを実施し、以下を実演しました:

- 簡単なプロンプトでSEO記事の構成案が迅速に生成される様子
- Deep Research機能を用いた詳細な記事本文の生成
「AIが生成した情報には誤りが含まれる可能性があるため、出典を確認し、正確性をチェックすることが不可欠です」と内田氏は強調しました。
使用するAIツールについては、ChatGPT、Gemini、Claudeなど特定のツールにこだわる必要はないと助言しました。
「使用するAIツールはChatGPT、Gemini、Claudeなど何でも構いません。1ヶ月前に良かったツールと今では違うこともあり、ツールは急速に進化しているので、現時点で最適なものを選べば良いでしょう。」
パネルディスカッションと質疑応答
ウェビナー後半では、豊藏と内田氏に加え、司会の長谷川氏も参加してパネルディスカッションと視聴者からの質問への回答が行われました。
AI時代にSEO投資はどう変わる?予算をどう設定する?
AIツールの進化が急速であるため、従来の年間予算の策定や業務フローの固定化が難しい現状について議論されました。
豊藏は既存のフローにAIを適切に取り入れる難しさを指摘しました:
「既存のフローにAIを適切に入れていくのは難しいです。経営者目線だと『AIでコンテンツが作れるならSEO予算を削減できるのでは』という議論が増えていますが、変化が激しいため、予算段階での整理は現実的ではありません。」
内田氏は具体的な予算対策として「二段階構え」のアプローチを紹介しました:
「二段階で構えています。まず標準ツールを決めてそれを前提に業務フローを組み、さらに必要なツールのためのバッファー予算を年間で確保しています。ツールは1ヶ月単位で変わるので予算も業務フローも固定できないからです。」
この「AI用のバッファー予算」を年間で用意しておく方法は、実務的な対策として注目に値します。
また、AIツールのアウトプットの質が急速に向上している点も両氏から指摘されました:
「AIのアウトプットの質も2022年と2023年、2024年と2025年では別物です。使えないと思っていたものが実際には業務に使えるレベルになりました。社内で一日中AIツールを触って調べる人がいるとありがたいですね。」
AIで作ったコンテンツをどう差別化していく?
AIが生成したコンテンツをそのまま使用するのではなく、どう差別化すべきかという点について議論されました。
内田氏は差別化の重要性を強調しました
「ChatGPTにプロンプトを入れて記事を生成させ、そのまま掲載するだけでは差別化できません。自社情報や独自情報を追加することが重要です。」
豊藏は入力情報の整理の重要性と、プロンプトだけに頼るアプローチの限界を指摘しました
「インプットの情報を適切に整理することが重要です。プロンプトだけに頼るのではなく、複雑なコンテキストやインプットを入れていくと精度は上がりますが、コントロールが難しくなり編集に時間がかかります。編集者が本当に重要になっています。」
両氏とも、ウェビナーやインタビューなどの独自コンテンツをAIに学習させることが効果的な差別化戦略になるとの見解で一致しました。また、生成AI時代には編集者の価値が大きく上昇していることも強調されました。
AIセキュリティと著作権問題はどう管理死すべき?
AIツール活用におけるセキュリティ面と著作権の問題について質問がありました。
内田氏はAIサービス選択の際のポイントを説明しました:
「AIサービスが入力情報をオプトアウトできるかどうかを確認します。ChatGPTのチームプランなど企業向けに学習しない設定があるものを使うことが前提です。また個人情報や著作権に関わる情報を入力しないことも大切です。」
豊藏はアウトプットの著作権問題と編集の重要性を指摘しました:
「アウトプットの著作権問題も重要です。編集コストが高くなり、外注のみで完結させるのは難しい。リスクヘッジの観点から、きちんとチェックする体制と、レピュテーションの問題になりえないレベルの多少のミスは受け入れる仕組みが必要です。」
内田氏は著作権問題はAI特有のものではないとの見解も示しました:
「著作権問題は人間が作った場合でも起こります。ファクトチェックは今まで必要だったし、これからも必要です。」
生成AIで生まれたコンテンツはどう判断すべき?
生成されたコンテンツの評価については、「判断ができる人間が必ず行うべき」という見解で一致しました。
豊藏は、生成AIの活用の注意点を話しました。
「生成AIによるアウトプットの判断ができる人間がいないと生成AIを使うべきではありません。今の段階だと、それが正直なところです。」
内田氏は具体的な評価方法を提案しました:
「Deep Research系の機能を使って出典元を確認するのが有効です。それを人間が精査することで信頼性を担保できます。」
AI利用するのに抵抗感のあるメンバーとどう折り合いをつける?
チーム内にAI利用に抵抗がある場合の対応については、無理に利用を強要せず、成果で判断すべきという考えが示されました。
内田氏:
「抵抗がある人には使わなくていいと思います。強制する必要はありません。」
豊藏は分業の考え方を示しました:
「好きなチームとそうでないチームで分けた方がいいかなと思っています。その好きなチームが『これ確かにいいな』となって巻き込んでいけると理想ですけど、必ずしもそうではなく、アウトプットで判断すればいいのです。」
両氏とも、AIを使うこと自体が目的ではなく、最終的な成果が重要であるという点で一致しました。
AI ModeやAI Overviewへの対策で、過去の記事はどう整理すればよい?
AI ModeやAI Overviewが主流になった場合、既存のSEO対策記事の見直しが必要であることが議論されました。
豊藏は思い切った対応の必要性を主張しました:
「価値のないなと思うコンテンツは思い切って全部削除するか、リライトした方がいいです。昔に比べて全体的な成果物の品質のレベル感が変わっているので、難しかったら削除して作り直す方がいいと思います。」
内田氏は組織内での合意形成の難しさを指摘しました:
「削除という決断ができないケースが結構あります。外部コンサルから入ってもらった上で、『外部がこう言うのだから削除しよう』くらいのアプローチでないと、社内のみだと反発勢力が出てくるので難しいですね。」
また、AI ModeやAI Overviewの仕様は変化し続けているため、対策も継続的に見直す必要があるとされました。
UGCプラットフォームを運用しているが、どのような運用すべき?
ユーザーが自由に投稿できるプラットフォームでのSEO対策について質問がありました。
豊藏はガイドラインの重要性を強調しました:
「これはもうコントロールとガイドラインの設計がすべてなので、一般論を取り込みすぎない方が良い印象です。
内田氏も「状況次第」としながらも、「UGCをカテゴライズした上での対策」の可能性に触れましたが、一般的には難しいという見解を示しました。
コンテンツの削除・リライトの基準はどうやって決める?
どのようなコンテンツが削除・リライトの対象になるかという質問には、以下の基準が挙げられました:
- 流入がない
- 誰の役にも立たない
- 情報が古い
- 信頼性が低い
- サイトのテーマに合わない
内田氏は過去のコンテンツについても言及しました:
「昔アクセス稼げるから作ったけど、今別にサイトの方向性で合ってないよねというコンテンツも削除対象になりますね。」
豊藏はコンテンツの背景も考慮すべきと指摘しました:
「長年運営しているサイトだと、当時の担当者の得意ジャンルや手法がそのままレガシーな資産として残っているケースにも考慮が必要です。」
まとめ:AI時代のSEO戦略の新たな方向性
このウェビナーを通じて明らかになった、AI時代のSEO戦略における重要なポイントは以下の通りです:
- E-E-A-Tの重要性の高まり
- 経験、専門性、権威性、信頼性はAI時代でも変わらず重要
- 人間の判断とブランドとしての信頼感がより価値を持つ
- 情報キュレーターとしてのSEO担当者
- 単なるキーワード分析やコンテンツ制作者から、情報の価値を見極め、編集・キュレーションする役割へ
- より広い視野での連携(デザイン、システム、経営層との協働)が必要
- 生成AIの適切な位置づけ
- AIはあくまで「情報整理やアイデア創出のパートナー」として活用
- 独自情報の提供は人間、情報整理はAIという役割分担
- 編集プロセスの重要性の上昇
- ファクトチェックを含めた編集工程が最も時間と労力を要する
- 編集者の価値と役割が一層高まっている
- 柔軟な投資と組織体制
- 「標準ツール+バッファー予算」の組み合わせによる柔軟な投資計画
- AIに詳しいチームと従来型のチームの分業と成果ベースでの評価
- コンテンツの質と差別化
- AIによるコモディティ化への対策として独自情報の付加が不可欠
- ウェビナーやインタビューなどの独自コンテンツをAIに学習させる差別化戦略
AI時代のSEOは「信頼できる情報のキュレーション」と「ブランド価値の構築」がますます重要となり、技術と人間の判断力を最適に組み合わせたアプローチが成功の鍵となるでしょう。
また、生成AIの進化も日進日歩の勢いで進化をしています。技術の進化に敏感になり、日々試行錯誤することは避けられません。
引き続き、こうしたセミナーやイベントを実施していきます。是非ご参加ください!
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