AIを全員に配ったあと、何が残るのか——JADE長山一石さんと語る、AI時代の仕事と組織

豊藏JADEさんのAI活用レベルを100点満点でいうと、今何点くらいですか?
そんな質問から始まった「JADEふらっとトーク vol.25」。
今回、株式会社JADE ファウンダー/取締役/最高戦略責任者の長山一石さんと、AI活用や組織づくりについて1時間ほどお話ししました。
話題は、JADEのAI活用から、レビュー、コンサルタントの価値、人材育成、ナレッジマネジメント、BigQueryまで広がりました。
その中で何度も話題に戻ってきたのが、AIによって「作ること」が簡単になったあと、何が人間の仕事として残るのかという問いです。
※本記事は、2026年8月18日に行われた「JADEふらっとトークVol25」の内容をシンクムーブの豊藏目線で再編集したものです。ぜひ、動画もご覧ください!
JADEでは、AIをどこまで使えているのか
まず聞いたのは、JADEにおけるAI活用の現在地です。



JADEさんって、AI活用を100点満点でいうと、今何点くらいなんですか? 他社から見るとかなり進んでいるのか、それともまだ70点くらいなのか



そういうスケールで考えたことはないですけど、他の会社さんと比べれば、活用度合いとしてはかなり高い方なのかなという気はしますね
JADEでは、Google Workspaceを通じてGeminiを比較的早い段階から利用し、その後Claudeも全社で使える環境を整えてきたそうです。
エンジニアリングでは、AIによって開発の進め方にも変化が出ているようです。



一番要件定義とかプロダクト知識に近い人って、マネジメント側にいるので、自分でずっとコードを書くわけにもいかないじゃないですか。コードを書く部分をAIにやってもらうことで、機能のリリースまでかなり早くなったというのはあります
一方で、最初からAIが実務で使える水準だったわけではありません。以前、店舗ページに掲載するエリア説明をAIに生成させた際には、地理情報の誤りも多く、実用には難しい時期もあったとのことでした。
AI自体の性能が上がり、使う側も試行錯誤する。
そうして利用範囲が広がってきたわけですが、ここで私は別の問題が気になりました。
AIで作れるようになるほど、レビューが難しくなる
AIを使えば、以前より簡単に文章を書けます。分析もできます。コードも書けます。
その結果、経験の浅い人でも、自分一人では作れなかったようなアウトプットを作れるようになっています。
ただし、作れることと、そのアウトプットを評価できることは別です。



自分のスキルがまだそこまで追いついていないときに、自分のスキルを超えたものをAIに生成させても、それが正しいのか、設定した課題に対して適切なソリューションなのかって、本人には判断できないことがありますよね



そうですね。AIが生成したものであったとしても、その説明責任は、AIに生成させた人が持たないといけないと思うんですよね



やっぱりそこですよね



AIに生成させたものをそのまま出すのであれば、ジュニアレベルの人はいらないじゃないですか。AIが生成したものであったとしても、その説明責任を果たせない段階でレビューに投げてはいけない、という話だと思います
この「説明責任」という言葉は、今回の対話の中でもかなり印象に残りました。
AIに作らせたものを、そのまま上位者へ渡して「これで合っていますか」と聞く。それでは、作る側が省力化した分だけ、レビューする側へ仕事を移しているだけです。AIによって「作れるかどうか」の差は小さくなります。
一方で、
- なぜこのアウトプットなのか。
- どこまで正しいと考えているのか。
- 何がまだ分かっていないのか。
ここを自分で判断し、説明できるかどうかは別の能力です。
AIによって生成が簡単になるほど、判断する力と、その判断に責任を持つ力の重要性は、むしろ上がっていくのではないかと思います。
AIで、人間の価値は下がるのか
そこから、「AIによって逆に価値が上がる能力はあるのか」という話を聞きました。



生成AIが進化したことで、逆に『この能力って価値が上がったよね』と思うものってありますか?



最初に出てきたときは、むしろ知性とか知的レベルというものの価値が、AIによって市場に飽和することで毀損されるんじゃないかと思っていたんですよ
文章を書く。情報を調べる。分析する。コードを書く。
これまで知的労働として評価されてきた仕事をAIが安価に提供するようになれば、当然、その希少性は下がります。
JADEのようなコンサルティング会社にとっては、かなり直接的な問題です。



我々のコンサルティングチームと同等のレベルにAIが単独で達成できるのであれば、市場でのバリューを根本的に毀損することになるので、それならビジネスモデルを考え直す必要があるという危機感はありました
そこで、AIに分析や提案をさせたり、AIエージェントを試したりと、半年から1年ほど試行錯誤してきたそうです。



その結果、暫定的な結論としては、意外と人間の価値は下がらない、というのが個人的な結論ではあります



それは、どういうところで感じますか?



コモディティ化していたり、すでに確立された領域であれば、AIでもかなりできると思います。ただ、我々がここ5年ぐらいやってきた水準を完全に代替させるのは、まだできなそうだな、というのが今のところ行き着いたところですね
AIで仕事ができるか、できないか。単純に二択で考える話ではありません。
一定水準までならAIだけでもできます。ただし、人間が求める品質が高くなるほど、そのまま代替することは難しくなります。
AIが「書く」ほど、「何を書くか」が重要になる



例えば今日の対談も、文字起こしして、論点やテーマを構造化させれば、それっぽいイベントレポートは作れると思うんですよ。でも、そもそも話している内容が面白くなかったら、そんなに面白いものにはならないと思うんですよね
AIは文章を整えられます。要約できます。構造化もできます。
ただ、何について話すのか、どこを掘るのかという「種」の部分は、その前に必要です。



その種をどう作るかと、AIのアウトプットをどう解釈して、どうディレクションするか。そこが人間の価値になるのかなと思っています
これは、先ほど長山さんが話していた「説明責任」ともつながります。
AIが担うのが「生成」なら、人間に残るのは、その前後にある問いと判断です。つまり、AIによって「作る能力」がコモディティ化するほど、その前後にある判断の価値が相対的に上がる。
今回の対話では、そんな構図が少しずつ見えてきました。
「良い仕事」を、どうやって組織で共有するのか
レビューの話から、JADEでは「良い仕事」をどう定義しているのかも聞きました。
JADEでは、コンサルタントの能力や成果物を複数の観点から評価し、プロジェクトについて定期的にレビューする仕組みを持っているそうです。
専門スキルも「SEOができます」という大きなくくりではなく、どの領域を理解しているのか、どのような分析や提案ができるのか、といった形で具体化されています。
また、ナレッジ管理について長山さんは、



Notionにないものは、基本的にはこの会社には存在しない、という感じでやっています
と話していました。
社内勉強会の議事録や録画も残し、仕事の進め方や過去の知識をNotionへ蓄積しています。



極論、入社して1カ月くらいひたすら過去のNotionを読んでいるだけでも、めちゃめちゃ勉強できると思います



そのNotion、どうやったら見られるんですか?



入社したら見られます(笑)
これは単なるNotion活用の話ではないと思いました。
AIに仕事を任せるためには、そもそも人間側の仕事の進め方がある程度言語化されている必要があります。
「自分たちはこう判断する」「この仕事はこう進める」というものが暗黙知のままだと、AIに渡す材料もありません。逆に、仕事の進め方や判断基準が言語化されている組織は、人間にもAIにもナレッジを渡しやすい。
つまり、AI活用の前提として、組織の知識がどの程度言語化されているかがかなり重要になるのではないかと思います。
AI時代になってから、人材要件を変えたわけではない
JADEのValueについても話を聞きました。
JADEが掲げているのは、Curiosity、Integrity、Convivialityです。



これって、生成AIが普及してから作ったわけではないですよね?
長山さんによれば、2021年にはすでに整理されていたものだそうです。つまり、AI時代を見越して作られたものではありません。
ここで興味深かったのが、JADEでのAI活用の具体例です。
プロジェクト管理をAsanaからLinearへ移行した際、個人のToDo管理がしづらくなったメンバーが、自分用のツールをAIで作ったそうですが、会社から「AIを活用しなさい」と言ったわけではなく、不便だったから自分で作ったそうです。
新しいものを面白がる。自分で調べる。必要なら作る。
そういう人たちを以前から大事にしてきた組織にAIが入ってきた結果として、活用が自然に進んでいるように見えます。
AIスキルそのものより、その前提になる人材特性の方が重要なのではないか。
この話を聞いて、そんなことを考えました。
BigQueryと「分析力」の話
後半では、BigQueryやデータ分析についても話しました。



BigQueryを使いなさいって、5年くらいずっと言っています
以前はBigQueryにデータを蓄積しても、それを扱うにはSQLを書く必要がありました。
しかし今はAIがSQLを書いてくれます。
以前からデータ基盤を持っていた会社ほど、AIの恩恵を受けやすくなっているわけです。
一方で、私が気になっていたのは、その先でした。



分析した結果を、実際のアクションに落とすところって、結構難しくないですか?



分析力を上げようと思って上がったわけじゃないので。分析力って何なのか、僕はよく分かっていないんですよね
JADEでは、問題があれば、それを確かめるために必要なデータを見る。
結果が分かったら、次のアクションを決める。
その順番で普通にやっているだけだという話でした。



今の話、なんか『授業毎日聞いてたら定期テスト100点取れるでしょ』って言ってる人みたいですね(笑)
AIはSQLを書けます。分析案も出せます。
でも、
- 何を確かめるのか。
- 結果をどう解釈するのか。
- その結果から何を実行するのか。
ここは依然として人間側に残っています。
「分析力」と呼ばれているものの中には、分析技法そのものよりも、問題を分解して、データとアクションをつなぐ力がかなり含まれているのかもしれません。
長山さんの話を聞いて、私が考えたこと
約1時間の対話を振り返って、個人的には、AIは組織を強くするというより、もともとその組織が持っていた強さと弱さを増幅するものなのではないかと感じました。
JADEでは以前から、仕事の進め方や「良い仕事とは何か」を言語化し、ナレッジをNotionに蓄積してきました。また、成果物については本人が説明責任を持つという考え方があり、Curiosity、Integrity、ConvivialityというValueもAI以前から大切にしています。
そういう土台があって、そこにAIが入ってきています。
だから、AIがJADEを突然強くしたというより、もともと持っていた組織の強さが、AIによってさらに活かされているように見えました。
そして、逆もあると思います。
判断基準が曖昧な組織にAIを配れば、レビューが増えます。仕事が暗黙知に依存していれば、AIへ渡せる知識も少なくなります。成果物について説明責任を持つ文化がなければ、「AIがそう言ったので」というアウトプットも増えます。
AIは、自動的に組織を強くしてくれるものではありません。
むしろ、その組織がもともと持っていたものを、より見えやすくするものなのだと思います。
AIは文章を書けます。コードも書けます。SQLも書けます。分析もできます。
「作ること」のコストは、これからさらに下がっていくと思います。
だからこそ、
- 何を作るのか。
- なぜそうするのか。
- 何をもって良いとするのか。
- その判断に、自分で責任を持てるのか。
このあたりの価値は、むしろ上がっていくのではないでしょうか。
今回の機会を通じて、そんなことを考えました。
本編はこちら
実際の収録では、ここで紹介した内容以外にも、JADEでのAI活用の具体例や、エンジニアリングの進め方、人材育成、社内でのナレッジ共有など、もう少し幅広く話しています。
記事にするとどうしても論点ごとに整理されますが、実際には話しながら考えたり、途中で話が広がったり、少し脱線したりしています。
その空気感も含めて、今回の「ふらっとトーク」の面白さだと思っています。
AI活用そのものだけでなく、AIが当たり前になったあとに、仕事や組織がどう変わっていくのかに興味がある方は、ぜひ本編も見てみてください。
JADEふらっとトーク vol.25










