「AI活用は決まっていた。足りなかったのは、各論を一緒に進める相手だった」——株式会社じげん「アルバイトEX」AI活用支援事例

AIでコンテンツを強化したい。方針は見えているし、実装できるエンジニアも社内にいる。それでも、何から手をつけ、どう運用すればいいのか——その各論を一緒に走る相手が、社内にも、よくいる外注先にもいなかった。
複数の媒体から求人を集めて掲載するアグリゲーション型の求人サイト「アルバイトEX」。これを運営する株式会社じげんで、AI活用を推進した企画マーケティングUnit. Unit Head 兼 求人Div. Division Headの西尾大笑様にお話を伺いました。
シンクムーブは主に、施策の案出しと優先度付け、企画・プロンプト設計のプロトタイプづくりを担当。GitHubの権限を得てコードを見ながらの実装フォローまで踏み込み、約半年間で複数の施策を検証フェーズまで運びました。
| 課題 | アグリゲーション型ゆえに自社独自コンテンツが乏しく、SEO上の打ち手が必要だった。AIで補う方針はあったが、社内にAI活用の知見と推進企画がなく、各論をどう進めるかが描ききれていなかった。 |
| 支援内容 | 隔週の定例を軸に、施策の案出しから優先度付け、企画・プロンプト設計を提供。GitHubの権限を得てエンジニアと直接やりとりし、実装フォローまで担当。スコープを固定せず、状況に応じて支援の形を変えながら推進。 |
| 成果 | 構想で止まっていた施策が順に実装へ。求人詳細ページのAI要約は、既存システムに影響を与えない形で実装し、A/BテストでCVR +2.8%を確認。AI活用を「やりたい」から「進められる」に変え、少人数で複数施策を形にした。 |
📘 あなたのチームの成熟度は? → ThinkMove Academy(無料)
やりたいことは見えている。でも、各論の進め方がなかった

——シンクムーブにご依頼いただいた当時、どのような課題がありましたか?
西尾様: 検索のマーケットでどれだけシェアを取れるかが、事業上とても重要でした。そのために順位を上げたいと考えていましたが当社のサービスはアグリゲーションモデルのため他のメディアさんから求人をいただいているので、自社独自の求人案件がありません。どのサービスも掲載情報が同じになりがちという課題がありました。そのため自社独自のコンテンツを加えることがSEOにとって重要で、何か施策を打つ必要がありました。
西尾様: AIを使ってコンテンツを足したい、という大枠はあったんです。でも、AIまわりの社内ナレッジがなかったり、推進や企画のところに課題があって。それで外部の委託先を探していました。
——西尾様は普段、どのような業務を担当されていますか?
西尾様: 企画マーケティングUnit のUnit Headで、求人Div.の責任者も兼ねています。SEOや広告はもちろん事業をどう伸ばすかまで全体を見ている立場です。なので、このAI活用も担当している中のひとつ、というのが正直なところで、自分で手を動かして実装させる、というよりどこにリソースを賭けるかを決めるのが役割だと思っていました。
「実装するだけの会社なら、他にもあった」
——SEOだけで見れば、他の選定先もあったと思います。どんな軸で選んだのですか?
西尾様: まず「AIに強い会社」を探していました。そのうえで、企画や並走をしてくれるところ。実装に強い会社さんは一定数いるんですよ、フロントのエンジニアリングに強い、とか。でも、具体的に実装するだけじゃなくて、これをどう活用していけばいいのか、どう戦っていくのかを一緒に考えられる形がよかったんです。
——じげんさんは基本的に内製中心だと伺いました。それでも外部に頼んだのはなぜでしょう?
西尾様: 現場での推進や施策の各論は、外部の方がいた方が進めやすいケースが往々にしてあります。今回も、AIでコンテンツを増やそうという方針自体はあったのですが、具体の事例やプロンプトの作り方、どう運用していくべきか、というところに社内のナレッジがありませんでした。
「まずはひたすら案出しでした」──決めすぎずに広げる進め方
——最初は、どのような進め方からスタートしましたか?
西尾様: まずはひたすら案出しでしたね。事例も踏まえて、いろんな施策を出してもらって、インパクトと工数の2軸で、短期でチャレンジすることと、中長期でチャレンジすることに分けた、という感じです。
案出しと優先度付けを経て、取り組みは段階的に広がっていきました。
| 時期 | 取り組み |
|---|---|
| 序盤(4〜6月) | 既存DBを壊さない実装方法の整理。AI要約カード・求人タイトル改善・FAQ生成の企画。法的リスクの精査。 |
| 中盤(7〜9月) | 求人詳細ページのAI要約をABテストで検証。UI改善。Vertex AI Search(当時の名称、現Agent Search)による検索精度向上の議論。 |
——数ある選択肢の中で、求人詳細ページのAI要約から取り組む、というのは早い段階で決まった印象があります。
西尾様: データベース型SEOのトレンドとして、本当に必要なページだけをインデックスさせる、という考え方があります。当社は類似ページが多くて、サイト全体として詳細ページのインデックス率が低かった。詳細ページが重複と認識されているケースも多かった。そこに一番ボリュームがあって、伸びしろもある。だから、ここから取り組めば一定の効果が見込めるだろう、と。
——技術にVertex AIを選んだ経緯は?
西尾様: 求人領域では、フリーワード検索のクエリボリュームがすごく大きいんです。そこにポテンシャルがある一方で、検索精度に課題がありました。それを一括で解決できる手法は何か、となったときにVertex AIが候補に挙がったのに加えて、他社さんの事例でかなり伸びている例を知りました。検索からの遷移が大きく改善した、という事例が出ていたりして。それもあり、やりましょう、となったのが経緯です。
「GitHubの権限をもらって、エンジニアと直接」──企画の枠を越えて

——実際に進めてみて、特に良かった点を教えてください。
西尾様: 一点挙げるなら、実行の部分にがっつり入ってもらえたのが大きかったです。GitHubの権限をお渡しし、コードを見ながらやりとりしてもらいました。当社のエンジニアと直接コミュニケーションを取ってもらえて、問題なくスムーズに進められました。
西尾様: 事業としてこうやっていきたい、とか、会社としての施策の評価がこうなっている、みたいなところも汲んだうえで、企画や推進をしてもらえた。そこは非常に良かったと思っています。
——AI要約は、最初からうまく動いたわけではなかったですよね。
西尾様: 最初はそのまま使える品質じゃなかったですね。内容が薄かったり、表示が崩れたり。そこからプロンプトを方向づけしてもらって、見せ方も設計し直して、届く形に仕上がっていきました。難しいAI要約の実装のフォローは、現場からもありがたかったと聞いています。自分たちだけでは進行に難があったので。あと、ミーティングの中で幅広く提案をもらえたこと、その数が多かったことも良かったです。
構想で止まっていたものが、ひとつずつ動き出した
案出しから優先度付け、そして状況に合わせた柔軟な動き方を通じて、構想にとどまっていた施策が、西尾様の采配のもとで順に実装まで到達していきました。AI要約カード、求人タイトルの改善、FAQ生成の企画。法的リスクの精査で見送ったものもありましたが、少人数の体制で複数の打ち手を検証できる形まで運んでいます。
そのひとつ、求人詳細ページのAI要約は、本番システムへの影響を抑えた設計のもとで実装し、ABテストで効果を検証するところまで到達しました。ひとつをやり切って終わりではなく、状況に応じて打ち手の幅を広げ、止まっていたものを順に動かしていく。明確な方針を持つ担当者と、形を変えて応える外部パートナー。その噛み合わせが、複数施策の前進につながったと感じています。
「大方針はある、でも各論が弱い」会社に勧めたい

——逆に、もう少しこうだったら、という点はありましたか?
西尾様: 論点を立てては回すイテレーション型で進めたので、中長期の方針がもう一歩見通せると良かったな、というのはありました。都度のサイクルで進む良さはあるんですが、全体の見通しという意味で。優先度付けやゴール設定をもっとシャープにできれば、というのは自分への宿題でもあります。
西尾様: あとは半分笑い話なんですけど、当時もAIってすごいよね、となっていましたが、今(2026年6月時点)の方が進化の速度がすごいじゃないですか。それくらい動きの速い領域に、前例のない段階で踏み込んだ、ということだと思っています。
——この支援を、どんな会社・どんな人に勧めたいですか?
西尾様: 当社のケースでいうと、大方針は決まっている、でも各論のハウツーが弱い、というところ。外部の知見をうまくインプットすることで、推進が見えてくる業態とは、相性がいいと思います。
西尾様: 事業会社って、一人のマーケターが見る範囲は広くなる分、深さが足りなくなりがちなんです。だからこそ、伴走してくれる相手がいると非常にありがたいと感じています。現場のスキルや相談相手がいない、ブリッジが弱い部門など、そういう部門での立ち上げとは、すごく相性がいい気がします。ディテールの相談ができたのは、コンサルとしての大きなバリューを感じました。
シンクムーブ豊藏からのコメント
西尾様は、SEOもデータベース型サイトの設計の経験も豊富な方でしたので、弊社の役割はむしろ、その確かな方針に紐づいた各論の部分を、一緒に走り切ることだったと考えています。
方針はある。実装できる人もいる。それでも止まってしまうのが、車内に前例の少ないAI活用の難しさです。だからこそ、決められたものを作る作業ではなく、状況に応じて動き方を変えてきました。
明確な方針を持つ方ほど、伴走者に求めるのは柔軟さだと思います。西尾様が率直にフィードバックをくださり、任せる範囲を段階的に広げてくださったからこそ、ここまで一緒に取り組めました。
またご一緒できる機会を楽しみにしています!



